私
自慢の娘だと、そう言っていたそうだ。
母から聞いた。父は私のことを、「自慢の娘だ」と言っていたらしい。
わからない。
そう聞いたときは少しプラスの感情を覚えたが、なぜ父が私のことを「自慢する」のかよくわからないとも思う。
自慢とは、自分のことを自分で褒めたりすることではないのか。私は父親に経済的・親として全うすべきことをしてもらったとは思っている。しかし、「自慢する」に値するほどの恩義を受けたことがあったか?
わからない。
私は私で生きてきたし、親の養育を受けて育ってきたのは間違いないが、親は親、自分は自分ではないのか。
父親はよく親から殴られたり玄関先に閉め出されたりしていたらしい。私は虐待を受けなかった。
母の実家はレトルトや惣菜で食事を済ませることが多かったらしい。私のお母さんはどんなに忙しいときでも、家族の分のご飯を作って与えてくれる。
私は小学生に入るとき、「大人になっても使えるように」と、家具で有名な地域まで出かけて、凝ったデザインの木の勉強机を買ってもらった。
私は親に学費を出してもらった。通学費用も家賃も親が払った。
私は、私の家庭は、しあわせなのか?
私の家は、ふつうなのか?
考えれば考えるほどわからない。
側から見ればしあわせな家庭かもしれない。なんの変哲もない。
私は何がいけなかったんだろうと、思う。
家庭でも学校でも親でもない、自分自身なのだと分かっている。
分かっているから、しんどい。
逃げることは簡単だ。向き合わないことも簡単だ。
でも、それでいいのか、と自問する。そんな思いが今日も尽きない。