美しいもの

美しいものを追いかけていたい http://twitter.com/kasg_wr

河原

ああ大概にしろ。

彼にされたことを、私は別の彼女にやってしまったのだ。

あの経験が、今の自分にどれだけ影響しているのか分からない。あの経験でどれくらい傷ついたのかも分からない。実際あのとき以来私が劇的にふさぎ込んだかと言われればそんなことはないし、傷つけられるようなことをされたにもかかわらず、ああそうだよなあと、あっけなく途方にくれる自分がいた。そして今も。あれは、この感想は、まさに諦観だ。

 

当時のことを何度となく反すうする。そのときに初めて、彼に裏切られたとか傷つけられたとか、そういうネガティブな感情が生起するのだ。反すうしなければ、大してダメージを受けていないと言えるのか、それとも、無意識に大ダメージをくらっていて、潜在的に自分の今の性格や行動に影響を与えているのか。どちらにせよ、何度も何度も反すうしてしまうこの出来事は、自分にとって印象的な出来事で、しがみついてしまう記憶なのだ。確かに、人と信頼関係を結ぶのは苦手だし、仲良くなるのも頼るのも苦手だ。極め付きは、私はカウンセリングの場でこの話をしたことがない。これはこの出来事が私にとって大して重要でないのか、またはこの出来事が私にとって大して重要でないと言い聞かせているかのどちらかだ。思い出すだけでむずがゆいあの出来事を、私はしばしば布団に入って目をつぶると思い出す。